昆虫研究家が「驚きの舞台裏」を公開 新種の生きものを発見して自分の名前がつくまで

【ちょっとマニアな季(ji)節(jie)の生(sheng)きもの】昆虫研究家・伊藤弥(mi)寿彦先(xian)生(sheng)が見つけた生(sheng)きもののふしぎ

昆虫研究家:伊藤 弥寿彦

「いつかは新種を……!」の夢が叶った!

伊藤先生が発見した新種「ラパラ ヤスヒコイ」
「いつか新種の虫(や他の生きもの)を発見して、自分の名前がついたらいいなぁ」って思ったこと、ありませんか? それって多くの昆虫少年少女にとって夢ですよね。私もそうでした。でも皆さん、生きものの新種ってどうやって見つかってそれが学術的に認められるのか、知っていますか?

……今回のお話は半分、私の「自慢ばなし」です(笑)

まだまだ何がいるかわからないラオスの森
東南アジアのラオスへ昆虫採集へ行ったときのことです。「虫採り」とはいっても私は虫なら何でも採るわけではありません。昆虫には、バッタやトンボ。チョウ、ガ、甲虫、ハチ、ハエ等々、あまりにもいろいろな仲間がいるので、どうしても自分が好きなグループだけを収集して研究することになります。

私は、甲虫、特にカミキリムシが専門です。このときは場所がラオスですから、これまで見たこともない種類がたくさんいて、もう何を採っても興奮するし、名前もわからないものだらけです。
ラオスの森で見つけた巨大ナナフシ
チョウもたくさんいました。日本のチョウは200種類ほどですが、ラオスにはなんと約1000種もいます! でも私は基本的にチョウは採りません(子どものころは採集して標本を作っていましたが……)。今は、たまにチョウ屋さん(チョウ好きな人)のおみやげ用に採るくらいです。

 2012年6月6日、ラオス北部のシェンクワンという高原地帯へ連れて行ってもらいました。草原にまばらに木が生えた、一見何の変哲も無くてつまらなそうな環境でした。こりゃカミキリはいそうにないなぁ……。ブツブツ言いながら歩き回っていると、足元の草にオレンジ色のはねを開いたシジミチョウがいました。

直(zhi)感的に「これは何となく珍(zhen)しそうだな」と思ってネットですくって採集しました。そのとき一緒にいたのが20年以上もラオスでチョウの採集と研究を続けている日本人、若原弘之さんでした。採ったチョウを見せると彼の目の色が変わりました。「うわぁー!これは見たことない!新種かもしれません!」彼は一目でそれを見抜いたのです。
ラパラ ヤスヒコイ
その後(hou)、3年かけて詳しい研究(交尾期(qi)の形や過(guo)去の文献など)がなされ、新種であることが確定。学術論文としてRapala yasuhikoi Wakahara et Nakamura, 2015 という学名で記載されました。

「ラパラ」は属名(トラフシジミ属)、「ヤスヒコイ」は小種名(弥寿彦の意味)、「ワカハラ et ナカムラ」は、新種を記載した人の名前です。「若原と中村が新種として記載したトラフシジミ属のヤスヒコイ」という意味です。

学名はラテン語が基本で、小種名に人名をつける場合、男性にはiを、女性にはeをつけます。ちなみにitoi(イトウイ)にしなかったのは、伊藤は大変ありふれた名字で、虫の研究をしている伊藤さんがまわりにいっぱいいるからでした(苦笑)
ラパラ ヤスヒコイの裏面
日本を含め、世界にはまだまだ新種がいることは間違いありません。

でも実際には「新種の虫」を見つけることよりも「それが新種かどうかわかる人」を見つけるほうがむずかしいのです(笑)。そのとき、たまたまチョウを極めた若原さんがいたのは幸運でした。

それにしてもラオスの旅では何百、何千ものチョウを見ましたが、私が採ったのはたった2頭! そのうちの1頭がこれまで誰も採ったことの無い未知の種類で、それに自分の名前をつけてもらっちゃった、というのは本当に「ラッキー」の一言でした。
新聞掲載された論文

写真(zhen)提(ti)供(gong)/伊藤弥(mi)寿彦

いとう やすひこ

伊藤 弥寿彦

Ito Yasuhiko
自然番組ディレクター・昆虫研究家

1963年(nian)東京都生まれ。学(xue)(xue)習院、ミネソタ州立大学(xue)(xue)(動物学(xue)(xue))を経て、東海(hai)大学(xue)(xue)大学(xue)(xue)院で海(hai)洋(yang)生物を研究。20年(nian)以上にわたり自然番(fan)組ディレクタ...