絶滅した古生物はどうやって復元するの? アンモナイトが現在の復元図になるまでの歴史を紹介

【ちょっとマニアな古(gu)(gu)生物のはなし】古(gu)(gu)生物学者・相場大佑先生が見(jian)つけた古(gu)(gu)生物のふしぎ

古生物学者:相場 大佑

アンモナイトの復元の歴史

動く図鑑MOVE『あつまれ どうぶつの森 島の生きもの図鑑』より イラスト/川崎悟司
絶滅して今は生きていない古生物が、実際にどんな姿をしてどのように生きていたのかは、古生物学の研究から推測されています。研究で新しいことがわかると、古生物の姿は更新され、その姿を想像して作られた復元画も新しく描き変えられていくことがあります。
例えば、獣脚類のスピノサウルスは、以前は地面を2本の後脚だけで陸上に立つような姿として描かれていましたが、2014年の研究以来、前脚と後脚の4本で立ち、水中生活をしていた姿として復元されるようになりました。(しかし、この説には反論もあり、まだ議論が続いている最中です)

この他にも、さまざまな恐竜・古生物に復元の歴史があるのですが、今回は、これまで日本ではあまり紹介されてこなかったアンモナイトの復元の歴史を紹介したいと思います。

最初の復元画
アンモナイトは渦巻き状の殻を持っていますが、イカやタコ、オウムガイと同じ頭足類の仲間です。

アンモナイトの歴史上もっとも古い復元画は、1830年にヘンリー・デ・ラ・ビーチにより制作された有名な絵画の一部に見られます。この絵画はイギリスのジュラ紀の海岸を描いたもので、魚竜「イクチオサウルス」や首長竜「プレシオサウルス」、翼竜「プテロダクティルス」などとともに、アンモナイトが描かれています。
ヘンリー・デ・ラ・ビーチによる絵画を元にジョージ・シャーフにより制作され、1836年出版の教科書に掲載された版画。
右側に描かれているアンモナイトの部分を拡大してみましょう。
これがアンモナイトです。海の上に浮かんでいて、タコのようにグデっとした体、そしてウサギの耳のような部分があります。この復元画は、殻をもつタコの一種「アオイガイ」が参考にされたものであるとされています。

アオイガイも渦巻き状の殻を持ちますが、アオイガイの殻とアンモナイトの殻は、起源も構造も機能もまったく異なるものです。アオイガイの腕の一対は、殻を作るために大きく平べったく変形していて、これが復元画に見られるウサギ耳の由来です。
タコの一種「アオイガイ」
左(zuo):体の部分のみの古典的なイラスト
右(you)上:かつて考えられていたアオイガイの生息時のすがた(生きた姿としてなかなか観察されずに想像されていた)
右下(xia):実際のアオイガイの写真
アンモナイトが頭足類ということまではこの時代に、すでにわかっていたのでしょう。しかし、後に比較されることになる「オウムガイ」がこのときにはまだよく知られていなかったため、殻をもつ頭足類といえばアオイガイ、ということでアンモナイトの復元の参考にされたようです。

オウムガイを参考にした復元画の登場
その後、アンモナイトとオウムガイの殻の構造がよく比較され、アンモナイトと近いのはアオイガイよりもどうやらオウムガイのほうだ、ということになり、19世紀後半(1870年ごろ)にはオウムガイを参考にしたと思われる復元画が描かれるようになり、20世紀初頭(1910年ごろ)にはこのスタイルがすっかり定着しました。
ハインリヒ・ハルダーによる1908年の復元画
フィリピンに現在も生きるオウムガイ
その後、2010年あたりまでのおよそ100年もの間、オウムガイ、イカ、タコ、それぞれに似たさまざまなアンモナイトの復元画が描かれてきましたが、共通していたのは、その多くに、オウムガイによく似たフードがつけられていたことでした。
オットー・ハインリヒ・シンデヴァルフによる1958年の復元画。オウムガイにかなり近い姿で描かれている。
最近の復元

最近(2010年以降)では、様々な発見によりアンモナイトのイメージはかなり固定されました。

まず、アンモナイトの赤ちゃんのときの姿や、口の部分の特徴が、オウムガイよりもイカのほうによく似ていて、系統的にイカに近いことがわかり、イカをベースとしたものが多くなりました。

また、かつて主流だったオウムガイのようなフードが付けられることは少なくなりました。なぜフードをつけなくなったかというと、少し難しいお話ですが、フードはオウムガイが進化の中で独自に獲得した特徴であることがわかり、別の進化を辿ったアンモナイトが、オウムガイと同じようにフードを進化させた根拠がなくなったためです。(以前はオウムガイが頭足類の中ではもっとも古くから存在しているということから、オウムガイがもつ特徴が、頭足類の基本のように考えられていたようなところがありました)

この他にも、アンモナイトだけでなく、すべての頭足類の腕の本数は基本数の10本から、進化の中で減らしたり(タコ=8本)、増やしたりしていた(オウムガイ=60〜90本)ことや、大きな眼の痕跡が残ったアンモナイトの軟体部の化石、腕の先についていた鉤爪の化石などの重要な発見がありました。

このように、以前よりもアンモナイトの姿が鮮明にわかり、フードがなく、10本腕で目が大きいイカのような姿が、現時点での最新知見によるアンモナイトの復元です。
動く図鑑MOVE『あつまれ どうぶつの森 島の生きもの図鑑』より イラスト/川崎悟司
2022年に発売された、動く図鑑MOVE『あつまれ どうぶつの森 島の生きもの図鑑』では最新知見に基づいたアンモナイトの復元画が掲載されています。


おわりに
以上がアンモナイトの復元の歴史です。
最初のものと最新のものを改めて比べてみると結構違いますね。
アンモナイトの復元の変遷
古生物の復元は、そのときそのときに明らかになっていることに基づいて行われるものなので、古生物の復元画は、古生物学の進展そのもの、その古生物(ここではアンモナイト)を人間はどこまで理解できたのかを映す鏡みたいなものです。

もちろん、現在の復元画が「正解」とは限りません。まだまだよくわかっていない体の部位はありますし、アンモナイトは3億年以上に渡り進化し、1万種以上も存在していました。現在生きているイカやタコの種数は700種ほどですが、その姿はものすごく多様ですので、1万種以上いたアンモナイトはもっと多様だったはずです。中には私たちの予想もできないような姿をしたものもいたかもしれません。
今後の研究でアンモナイトの姿に関する新しい発見があったら、アンモナイトの復元画はまた変わっていくかもしれません。楽しみですね。


図鑑に載っている復元画を見比べてみよう
皆さんのお手元に少し昔に出版された恐竜・古生物の図鑑と最近出版された恐竜・古生物の図鑑があったらぜひ見比べてみてください。姿が変わっている恐竜・古生物はあるでしょうか? そういう視点で見てみると図鑑に載っている復元画も、古生物学という学問も、もっともっと楽しめるかもしれません。
画像の出典
1、2、4、5枚目:パブリックドメイン
3枚目:左・右上:パブリックドメイン、右:©Rebecca R. Helm. Image by Songda Cai. 元画像をトリミング(Wikimedia Commons; CC BY-SA 4.0)
6枚目:Schindewolf, O. H. 1958: Über Aptychen (Ammonoidea). Palaeontographica, 111A, 1-46. より引用。
7枚目:動く図鑑MOVE『あつまれ どうぶつの森 島の生きもの図鑑』より イラスト/川崎悟司
あいば だいすけ

相場 大佑

Daisuke Aiba
古生物学者

深田(tian)地質研究所 研究員。1989年 東京都生まれ。2017年 横浜国立(li)大学大学院博士(shi)(shi)課程修了、博士(shi)(shi)(学術(shu))。三(san)笠市(shi)立(li)博物館 研究員を経(jing)...