子育て真っ只中に「がん」に! 本人と家族は「何をやるべき」か専門家に聞いた

ホープツリー代表理事・大沢かおりさんに聞(wen)いた、がんになった親(qin)が子どものためにできること#1 受け止め方・手続き編

NPO法人ホープツリー代表理事:大沢 かおり

がんを告知されたら、治療、子ども、仕事、お金……心配はつのりますが、不安や落ち込みは、心を落ち着かせるために必要なプロセス。無理して前向きにならなくても大丈夫と、専門家は語ります。  イメージ写真:アフロ

“日本人のふたりにひとりは生涯でがんになる”というデータもあり、国民病のひとつとも言われるがん。子育て中にがんになったら、患者の親本人、子どもや家族はどうすればよいのでしょうか。

医療ソーシャルワーカーで、がんの親と子ども、家族を支援するNPO法人ホープツリーの代表理事・大沢かおりさんに、がんと診断されたときの受け止め方、必要な手続きについて聞きました。

大沢かおりPROFILE
医療(liao)ソーシャルワーカー。1991年より東京共済(ji)病院(yuan)(東京・目(mu)黒区(qu))に勤務し、2007年、院(yuan)内のがん相談支援(yuan)センター専任のソーシャルワーカーに。2008年、がんになった親とその子ども、家族をサポートするNPO法人ホープツリーを設立。子どものサポートプログラム「CLIMB®」を実施するほか、ホームページ上での情(qing)報提供や研(yan)修会(hui)を行うなど、さまざまな支援(yuan)活(huo)動を続けている。

大切なのは医療者から正しい知識を得ること

国立がん研究センターの調査によると、未成年(18歳未満)の子どもを育てるがん患者は、年間5万6143人(平均年齢:男性46.6歳、女性43.7歳)。その患者の子どもは8万7017人(平均年齢11.2歳)とされ、その多くが小学生以下です(※注1)。

子育て真っ只中でのがん宣告、自分の体のこと以上に、子どもの心配をする親も少なくないはずです。まずは何をするべきか、大沢かおりさんに聞きました。

──がんと宣告されたら、具体的には何をすればいいのでしょうか。

大沢かおりさん(以(yi)下、大沢さん) がんと診断された後の治療方針や手続きは、医師や看護師、医療ソーシャルワーカーから患者さんに説明があります。

医師から治療の説明がされた後、看護師や医療ソーシャルワーカーから補足の説明があるほか、「窓口での支払いが軽くなるように、限度額適用認定証の交付を申請してください」などと、まずは実務的なお話をしていきます。

仕事のことを気にされる方も多いのですが、例えば乳がんの場合、乳房温存手術なら経過がよければ手術の翌日には退院できますし、乳房切除術(全摘術)でも1週間くらいで退院できます。

また、乳がんの場合ですが、患者さんの6~7割程度はホルモン療法での治療になり、これなら髪の毛が抜けるなどの副作用はありません。抗がん剤治療を受ける場合も、ほとんど外来で行われています。

がんと言われたら、そのときは頭が真っ白になったり、涙が止まらなくなったり、不安で落ち込むのは当然のこと。子育て中なら、なおさらかと思います。

でも、治療の見通しが立って、だいたいの費用もわかり、仕事も長期間休む必要はない。これまでとさほど変わらない生活が送れるとわかれば、少しは安心できますよね?

ご家族にも「がんだけど、大丈夫。安心してね」と伝えられます。まずは、医療者から正しい知識を得ていただきたいです。

──がんを告知されたときのショックは、相当なものだと思います。受け止められるまで、どれぐらいの時間を要するものでしょうか。

大沢さん 一般的に、2週間ぐらいで普段の生活を送れるようになると言われています。ただ、がん以外にも病気を患っていたり、家族のトラブルや経済的不安など、ほかに悩み事を抱えていると長引くこともあり、個人差はあります。

また、ひと口にがんといっても、症状が穏やかなものから見通しが厳しいものまでさまざまで、がん種によっても変わってくるでしょう。

ひとつ言えるのは、告知を受けた後、すぐに「がんばろう」と無理に前を向かなくても大丈夫だということ。不安や落ち込みは、心を落ち着かせるために必要なプロセスです。

保険や会(hui)社の手続きなど、事務作業(ye)を淡(dan)々と進める中(zhong)で気(qi)持ちが整理され、徐々に元の自分を取(qu)り戻す方が多いように思いますね。

2007年から、東京共済病院のがん相談支援センターの運営を任されている大沢かおりさん。自身も乳がんと診断された経験があり、患者さんからの信頼も厚い。  撮影:星野早百合

不安や悩みはひとりで抱え込まないこと

──がんの不安や悩みは、誰に相談するのがよいでしょうか。

大沢さん がん自体のことなら、患者さんのがんをもっとも理解している主治医に聞くのがいちばんです。看護師や薬剤師も頼りになりますし、何でも相談できる病院の「相談室」を利用するのもいいでしょう。

がん診療連携拠点病院(※注2)に設置されている「がん相談支援センター」なら、がんに詳しい看護師、医療ソーシャルワーカーなどが対応してくれて心強いです。「がん相談支援センター」は、国立がん研究センターが運営するWEBサイト「がん情報サービス」で検索できます。

●WEBサイト「がん情報サービス」 


症状や治療についてはもちろん、生活や仕事、収入など、どんな些細な悩みもひとりで抱え込まず、病院の誰かに相談することをおすすめします。

特に医学的な不安は、正しい情報を集めて理解することでやわらぐものです。ぜひ気軽に話せる相手を選んで話していただきたいですね。

──がんと告知されたママパパの場合、まずは配偶者である夫・妻に伝えるケースが多いと思います。両親や義両親、きょうだいには、伝えたほうがいいでしょうか。

大沢さん 手術前や手術後、抗がん剤の治療を始めるときなど、どこかのタイミングで、配偶者の方には患者さんと一緒に主治医から説明を受けていただくのがよいと思います。

患者さんと家族で共通の認識を持って治療に臨めますし、わからないことを直接主治医に聞くことができるからです。お子さんへの伝え方は、第2回以降で詳しくお伝えしたいと思います。

両親や義両親は、同居か別居かにもよりますよね。遠くに住んでいて疎遠だったり、親自身が病気を抱えていたり、伝えるのを躊躇する状況なら、無理にすぐ伝えることはありません。

「うちの親は、伝えたらショックで大騒ぎすると思う。親をなだめなければいけないと考えるだけで疲れてしまうし、今はまだ気持ちに余裕がないから言わないでおく」という患者さんもいらっしゃいます。

きょうだいは、仲がよければ、両親よりも頼りになるかもしれませんね。親より年齢が若い分、体力もあります。子どもの世話を任せられる場合もありますし、実務的な作業をテキパキとこなしてくれることも多いです。お金の相談もしやすいと思います。

──子どものことを考えると、保育園や幼稚園、学校のママ友に伝えるべきか迷うところです。

大沢(ze)さん 患者さんの気持ち次第ですね。かつらとマスクでカバーしながら、周りに知られないように生活している方もいれば、オープンにして子育ての協力体制を整え、ママ友にお子さんの送迎のお手伝いをお願いしている方もいます。

ただ、低年齢のお子さんによくあるのですが、がんだと伝えたときに「お友達に言わないでね」と言っても、だいたいのお子さんは守れません。

守らせるのも酷なことですし、「子どもに伝えたら、お友達やその親にも伝わるだろう」と思うなら、先に自(zi)分から話してしまうのも手。周りに隠し続けるのは、想像以上(shang)に疲れるかもしれません。

「高額療養費」組合健保なら「付加給付」があるかチェック

──医療費に関して、必要な手続きはありますか。

大沢(ze)さん 医療費が高額になった場合、あとから申請することにより自己負担限度額を超えた額が払い戻される「高額療養費制度」があります。しかし、戻ってくるまでの一時的な支払いは大きな負担に。

治療前にあらかじめ「限度額適用認定証」の手続きを行って、医療機関などに提示することで、窓口で支払う医療費を自己負担限度額までにすることができます。

自己負担限度額は所得によって異なり、例えば、年収が約370~770万円なら、負担割合3割で〈8万100円+(医療費-26万7000円)×1%〉と、約8万円。4ヵ月目からは多数該当となり、〈4万4400円〉になります。(※注3)

「限度額適用認定証」は、患者さん自身が加入されている公的医療保険(健康保険組合・協会けんぽ・共済組合など)に申請してください。

職場の担当窓口でそうした手続きをする流れで、がんの治療で休むこと、どれぐらいの休みが必要になるかを上司に相談するのもいいと思います。

──入院時の食事代や差額ベッド代などは別とはいえ、だいぶ負担を軽減できますね。

大沢さん そうですね。さらに、健康保険組合の中には、付加給付制度があるところも。付加給付制度とは、自己負担額が組合の定めた金額を超えると、超えた額が払い戻される制度のことです。

その金額は組合によって異なり、月2万円から5万円程度。例えば2万円の場合、限度額適用認定証を提示して約8万円を払っていても、3ヵ月後に6万円が戻ってきます。詳細は、組合のWEBサイトで確認してみてください。

ただし、加入している公的医療保険に関わらず、年収が約1160万円以上の上位所得者は、高額療養費の自己負担限度額が〈25万2600円+(医療費-84万2000円)×1%〉と、大きな負担がかかります。治療費や家計に不安があるときは、一度、医療ソーシャルワーカーなどに相談するといいでしょう。

がん保(bao)険や、がん保(bao)障が付(fu)いた民間の医療保(bao)険に加(jia)入している方(fang)は、保(bao)険金の請求手(shou)続きも忘れないようにしてください。

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