女優・杏「子育ては学ぶことだらけ」映画『窓ぎわのトットちゃん』出演 黒柳徹子さんはトットちゃんそのもの 

映画『窓ぎわのトットちゃん』出演 女(nv)優・杏さんスペシャルインタビューvol.1

ライター:小川 聖子

小学1年生でまさかの退学……そんなエピソードで始まる『窓ぎわのトットちゃん』は、トットちゃんこと女優でタレントの黒柳徹子さんの子ども時代を描いた自伝的小説です。日本で最も読まれた小説であり、今なお世界中で愛されるベストセラーがアニメーション映画になりました。(※2023年12月8日(金)公開)

この映画で、感受性豊かなトットちゃんの個性にいち早く気がつき、その成長を温かく見守ってきたママ役を演じているのが、女優の杏さん。現在はフランスで子育て中、黒柳さんとは長年交流のある杏さんに、作品の魅力とともに黒柳さんとの思い出、子育てのことをお伺いしました。

上海万博での徹子さんは「トットちゃん」そのもの!

──映画『窓ぎわのトットちゃん』でトットちゃんのママ役を務めた杏さん。杏さんと黒柳さんは家族ぐるみでお付き合いがあるとお伺いしました。

杏さん:そうなんです。一番密に過ごしたのは、2010年の上海万博のとき。一緒に中国に行ったのですが、徹子さんは、一緒に車に乗れば、「あれはなんだろう」、「ここが面白いわね」、「1回あそこに行ってみたい!」と、車窓から見えるすべてのものに反応されていて。

ホテルでは全く言葉のわからない現地のテレビを見て、「こんな歌のコンテストをやっていてね」「それがこんなだったのよ!」と全部を覚えていて、あとでみんなにお話ししてくださるんです。

私は仕事だとつい、乗り物で移動するとなれば少し目を瞑って休んだり、ホテルの部屋で待機ということになれば、読書をしたりという過ごし方をしていたので、アクティブな徹子さんにびっくりして。本当に『窓ぎわのトットちゃん』のトットちゃんのままなのだなと思いました。

私も含め、人は知らない場所や物・人に対して少し臆病になってしまったり、心のシャッターを下ろして自分を守ろうとしてしまったりすると思うのですが、徹子さんは常に心を開放されているんだ、ということに当時ものすごく驚きました。

──すごいですね。2010年ですと、黒柳さんは70代後半です。

杏さん:
そうなんです。小学生のトットちゃんならわかりますが、体力的にも「そろそろお休みされるかな?」というタイミングでも誰よりもお元気で(笑)。この力の源は何だろうと考えさせられました。

徹子さんは、自分が気になったこと、心にとまったことをすごく大切にされているんです。さらにそれを人に伝えるとき、自分の感情をしっかり乗せて伝えるので、周りも「ああ、そんなことがあったんだ」とか、「この人はこんなことが好きなんだ」ということが、しっかり理解できるんです。

そんな姿勢がとても素晴らしいなって。私はなかなか同じレベルには到達できそうにありませんが、それでも「自分で枠を決めてはいけない」ということも含め、学びになることがたくさんありました。

子どもを一個人として扱う教育方針に感銘を受けました

──『窓ぎわのトットちゃん』は戦後最大のベストセラーです。どんなところが魅力だと思われますか。

杏さん:原作はもちろん、子どものころから読んでいました。大人になり、親になって改めて読み返すことで、私が演じた母親含め、トットちゃんの周りの大人たちの姿もよく見えてきました。

「戦前の話」と聞くと、私たちはどこか閉塞感があった時代のように考えてしまいますが、この作品に出てくる大人たちは、ヴァイオリン奏者であるお父さんも、随筆家だったというお母さんも、またトモエ学園の先生たちも、みんなとても自由でユニーク。

「こんな方々が実際にいたんだ」と知ることが、ひとつの希望に思えるくらい素敵な存在ですし、「この方たちのようなことを言える大人になりたい」と思いました。

特に、本人はまったく悪気はないものの、たびたび周囲を驚かせてしまうトットちゃんに、トモエ学園の小林校長先生が何度も語りかける、「きみは本当はいい子なんだよ」という言葉はとても印象的でした。
▲映画『窓ぎわのトットちゃん』では、感受性豊かなトットちゃんの個性にいち早く気がつき、その成長を温かく見守ってきたママ役を、杏さんが演じている。  ©黒柳徹子/2023映画「窓ぎわのトットちゃん」製作委員会
──小林先生は、学校の中に電車を置いて教室にしたり、リトミックを取り入れたりと、現代から見ても画期的で最先端の教育を取り入れていた方ですね。

杏さん:
本当に素晴らしいと思いました。私も含め、子どもを教育しなければならない大人は、ついつい「できていないところ」に目が行きがちです。そのため、「悪いところを直そう」「それでいい子に近づけよう」と考えてしまいますが、それに対して小林先生は「きみは本当はいい子なんだよ」と、その子の本来の良さを信じて、それを本人に伝えて伸ばしていくという、言ってみたら真逆のアプローチをされています。

だからこそ、徹子さんはあのように伸び伸びとご自身の個性を開花させていらっしゃるのですから、小林先生は本当に教育者として素晴らしい方だったのだと思います。

──トットちゃんのお話を4時間も聞いてくれたというエピソードもありました。

杏さん:
子どもとゆっくりお話をする時間をひとりひとりに対して設けるというのも、本当にすごいと思います。私だったらだんだん生返事になってしまいそうですが、見習いたいです。

小林先生は、トットちゃんもそのほかの子どもたちも、人格を持った一個人として、大人と同じように扱っています。一方、自分の子どもに対する怒り方を振り返ると、「もし相手が友人だったらそんな怒り方をするかな?」「そうはしないだろうな」という怒り方をしていることもあって……。そんな怒り方をしてしまうのは、どこか子どもを下に見ている部分があるからではないかと、改めて反省しました。

子育ては学ぶことだらけ! 毎晩のように「怒り方」を検索

──杏さんもお子さんたちの「怒り方」に悩まれることがありますか?

杏さん:
あります、あります! うちは年齢があまり違わない子どもが3人いるので、毎晩修学旅行の夜みたいに騒がしくなるんです。「楽しそうでいいね!」とも思いますが、勢いがつくと、優しく注意しても大人の言葉は全然響かなくて(笑)。さらに子ども同士が結束し出すともう、声を荒らげてしまいそうなこともあります。それはあまり良くないなと思うので、毎日のように「怒り方」を検索して……。

──検索されているんですね!

杏さん:
はい。自分は怒り方が上手なわけではありませんし、自分が怒られてきた、その方法が正しいとも限らないな、と。私たちのころは、先生にものすごく強く言われたり、ときにはゲンコツが飛んでくる……なんてことも普通でした。ただ、今はそんな時代ではないですし、そもそもが違うのかな? と思って検索しています(笑)。

親になってから、自分が経験してきていないこと、自分の中にないものをまさに今、習得している最中だという気がしています。新しい時代に、新しい考え方がどんどん生まれていますし、親になってからも学ぶことは本当に無限にあるなと実感しています。

もちろん、急に全部を習得することはできませんし、「こっちが理想だ!」というほうに急に方向転換するのも大変なので、少しずつ勉強しながら、エッセンスとして取り入れていけたらいいな、と思っています。
【2023年12月8日(金)公開の映画『窓ぎわのトットちゃん』に声の出演をされた女優・杏さんのインタビューは全2回。インタビューvol.2では、杏さんのフランスでの子育てや、読書家でもある杏さんのおすすめの本も聞いています!】
PROFILE
杏(あん)

2005年以降パリ・コレクションなどの国際的なファッションショーで活躍し、2006年ニューズウィーク誌「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれる。2007年に女優デビューし、『名前をなくした女神』(2011年)で連続ドラマに初主演する。NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』(2013年)でヒロイン役を務め、近年では映画『キングダム 運命の炎』『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』に出演。2022年には国連WFP親善大使に就任するなど、女優業を中心にナレーターや声優など多彩な活躍を続けている。
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